思い出迷子は負けのはじまり

趣味はジャニーズです

さようなら、私だけの神山くん

好感度タレントの不倫騒動に世間がざわつく中、私はまるで一人暗い深い井戸の中に落ちたような気分だった。

私はその時、何気ない気持ちでツイッターの虫めがねのところに「神ちゃん」と打った。すると、「神ちゃん」というかわいいニックネームの横に、いつもはいないその言葉が一つスペースを空けて出てきた。

青天の霹靂。とはまさにこのことだと思う。最初、全く理解できなかった。意味が分からなかった。なぜそのような言葉がそこにあるのか。「神ちゃん」というスーパーかわいいニックネームの横になぜそいつがいるのか。

何十人と顔も知らないおたくたちのツイートを読み進めていくと、どういうことが起こってこのような状況になっているのかがだいたい理解できた。ただ、肝心な目撃したとされるツイートは見つけることができなかった。

胸が張り裂けそうだった。とても苦しくなった。と同時にこのように胸を痛めている自分にとても驚いていた。

おたくたちがいろいろなことをつぶやく。「ギャップがかっこいい」だとか「健康面が心配」だとか「二十歳過ぎてるんだから普通だろ」とか。でも私の気持ちは全くもってそれらと違った。神山くんの健康面など考える余裕もなかった。ただただただただ嫌だった。嫌だという気持ちしかなかった。

なぜこんなにも苦しいのか。なぜこんなにも嫌なのか。私はそこで初めて気が付いた。私は今まで得てきた情報で、ガッチガチに私の神山くんを作っていたのだ。自然に私は「私の神山くん」を応援していたのだ。

カニアレルギーな神山くん。外食が嫌いな神山くん。負けず嫌いな神山くん。人見知りな神山くん。泳げない神山くん。インドアな神山くん。それらは全部私の神山くんだった。これまで神山くんは私の神山くんでなかったことはなかった。でも今回の神山くんは私の神山くんではなかったのだ。

私の神山くんはmvの撮影の合間、流星くんと二人でピースフルにお菓子でも食べながらモニターを見ているけど、誰のものでもない神山くんはそんな過ごし方はせず、もしかすると「神ちゃん行こうや」と流星くんに誘われて別室に行くのかもしれない。あくまでももしかすると。

その日はカメラロールにいるかわいい神山くんを見るのが辛かった。「かわいい♡」と思ってもその神山くんは私だけの神山くんであって、また何かの情報で胸が痛くなることがあったらどうしようと怖かった。





とても幸せな結婚記者会見を見てテレビの前でニヤけ、大先輩の解散危機報道に目を丸くし、ようやくざわついていた気持ちが落ち着き始めた。


さようなら、私だけの神山くん。それまで大好きだった私だけの神山くんはもういない。私だけの神山くんから誰のものでもない神山くんに、私は担降りするのだと思う。


だけれども、また、気付かぬ間に私は、私だけの神山くんを好きになっているはずだ。
結局つべこべ理屈並べたってスーパーウルトラミラクルキュートな神山くんを見ると、そんなことどうだってよくなって、かわいい!かっこいい!好き!の感情で満たされてしまう。







私以外私じゃないの。

神山くんが歌っている。そんなわけはない。